以下、2025年12月20日付新潟日報紙より引用します。(太字は引用者)
神奈川大学・幸田雅治教授のコメントより
総理大臣が議会から信任されて選ばれる議院内閣制と異なり、地方自治体が採用する二元代表制では、首長も議会も住民から直接選ばれている。首長と議会は信任関係にない。首長の信任、不信任を問う議案の提出権は議員の専権であり、首長から提案することは地方自治法上できない。花角英世知事が県議会に「信を問う」としたことは不適切だ。
地方自治法や逐条解説から、議会において首長の信任議案を提出することは可能とされている。過去の事例では、議会と首長が対立し、不信任決議案が出された際に首長派議員が対抗して信任議案を出すケースはあるが少ない。対立がないのに、あえて信任議案を出す必要はないからだ。
「信を問う」のであれば、辞職して再稼働を争点に知事選を行うか、県民投票をすべきだ。賛成派、反対派も一定程度納得できる。いずれも行わないのなら、県民を欺いたと言える。
花角知事が「原発の安全性について、国などの取り組みが県民に十分理解されていない」との状況を認めているのに再稼働を了解したことは、公共性を体現する存在の知事として問題がある。
県は安全対策などの周知を継続して行うとするが、賛否が分かれたまま周知するだけでは不十分。原発の問題は危険性に関する情報を共有し、意見を相互に交換するリスクコミュニケーションが重要。県民と専門家らが双方向で議論する場を設ける必要がある。
幸田雅治(こうだ・まさはる)山口県出身。東大卒。自治省(現総務省)に入省し、行政課長、国民保護・防災部長などを経て2014年から現職。弁護士。日本危機管理防災学会副会長。
拓殖大学・河村和徳教授のコメントより
原発再稼働問題は国策だが、是非の判断を地方自治体に代行させる構図になっている。国が前面に出るはずなのに、賛成、反対の矢面に立たされている花角英世知事は、難しい立場にあった。
再稼働を容認したとしても、知事は県が前面に立つ形は理不尽であり、地元同意の在り方などを変えるべきだと、原子力政策の課題を国に訴えてほしい。
再稼働に関する知事の政治判断は歴史が評価するだろう。好意的に見れば、テロ対策の不備など不祥事が相次いだ東京電力が運転している原発だからこそ、ここまで引っ張ったという見方もできる。
一方で、花角知事は目の前の人たちに嫌われたくないとの思いからか、八方美人になって決められず、問題がこじれてしまった印象を受ける。
花角知事は県民に直接選ばれた存在であり「雇い主」は県民だ。県民に信を問わなければならなかった。「信を問う」とは通常は選挙であり、来年の知事選のタイミングで判断を示すべきだった。
国からの再稼働の圧力に屈して、判断を前倒ししようとするから混乱が起きた。追い込まれた結果の意思決定に感じられ、政治家としての主体性が感じられなかったとも言える。
再稼働に反対する議員も、原発を動かさないことで税収や雇用にどのような影響があるか、その対応についての議論が不十分だった。先を見た上で反対する覚悟があったのだろうか。
河村和徳(かわむら・かずのり)静岡県出身。慶応大大学院博士課程単位取得退学。2025年4月から現職。全国知事会地方自治・民主主義の確立に向けた研究会構成員。


